![]() 温泉についてがふと思ったことや、調べたこと、 温泉の雑学などなどをつれづれと綴ったコラム集。 過去のコラム、バックナンバーはページ下へ。 ![]() | |
NO.8: 温泉本紹介 『温泉学入門』
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こんにちは、自称温泉人(Onsenist)、 温泉広報人の春山ゆかりです。 最近急に暖かい日がふえてきて、桜が気になる季節になりましたね。 メキシコでは、桜のような春を告げる花、ハカランダが葉桜ながら 葉ハカランダになってきて、すでに初夏の雰囲気が漂っています。 そんな今月は、新年度にむけて?気持ちもあらたに 入門書 『温泉学入門』をご紹介したいと思います。 |
![]() 温泉学入門 |
2005年初版の温泉入門書は、1940年設立の日本温泉学会によるもの。
ガイド本は数多とある中、意外に少ない温泉に関する解説書です。 学術的なアプローチで書かれた本とは言え、 入門書だけに、内容も分かりやすく ◆◆◆◆◆ まず、温泉とはなにか、ということから話は始まります。 温泉とは、地下から湧き出した湯のことだと 大概の人は考えていると思いますが、 実際、日本の法(温泉法)では、温泉は水蒸気やガスなども含んでいるし、 温かくなくても、一定の成分を含んでいる泉や、 動力で無理やり汲み上げたものも温泉になってしまいます。 温泉法は昭和23年のもの、多少改正されたとはいえ、 自然湧出して一定の温度以上、などという海外の温泉の定義より 随分ゆるい法律になっています。 それ故に、都会や住宅地の真ん中やどこにいっても 日本中に温泉施設ができてしまうわけで、 そこらへん、個人的にはどうなの?と強く思う部分なのですが 本の内容からずれてしまうので、それはまた今度にしましょう。 さて、本は続いて、温泉はなぜ温かいか、水分や成分はどこからくるのか、 地獄や間欠泉などの説明や、温泉地にすむ動植物、 温泉によって出来る鉱物などの簡単な説明が続きます。 ここでへぇ~と思ったのが、 温泉現象に関する、国の天然記念物が10件もあるということ。 玉川温泉にある北投石がそうだとは割と知られているものの、 石以外にも色々あったんですね! (岩間の噴泉塔、夏油温泉の石灰華など) 続いて、温泉の成分、泉質について 各泉質ごとの有名温泉地をあげながら、 その定義を紹介しています。 それから、温泉開発の歴史や状況、温泉の利用法について、 体に対する作用などをさらっとした説明が続きます。 最後には、温泉文化や日本と海外の温泉利用状況についてと 内容てんこもりのこの本。 地学(生成)、化学(成分)、物理(熱学)、生物、社会、歴史など、 色々な範囲にまたがる温泉学を たった120ページにおさめた、まさに入門書といった感じは とりあえず軽い温泉知識をいれておきたい、 なんて状況(どんな状況だ?)にはぴったりの一冊です。 ある特定の疑問について調べたい場合、 正直ほんの数行しか説明がないことが多いですが 巻末の付表や参考文献が役に立ちます。 あくまで、これは奥深い温泉界の入口、 表面の地図の目次にしかすぎないのです。 とはいえ、へえ~というトリビアがちらほらあったので そんなうちのいくつかをご紹介して、 非常に簡単な、本紹介を終わりにしたいと思います。 ◆温泉が作る宝石◆ 温泉成分が析出すると、湯の花やもっと大きくなって鉱物になると きれいな石材や宝石になることも! 石灰華(トラバーチン)は、乳白色のきれいな層が美しい建材になるし 珪酸が含まれる温泉の沈殿物、珪華ですが、 粒状のオパールが集まったようなきらきらの石を作ることがあるそうです。 確かにオパールは酸化鉱物(ケイ酸鉱物)で、主に 火成岩または堆積岩のすき間に、珪酸分を含んだ熱水が充填することでできるので 条件的に温泉がぴったりの宝石だったのですね。 ◆アクセサリー磨きも温泉で◆ よく硫黄泉についうっかりアクセサリー(銀)をつけたまま入ると 真っ黒に変色してしまうことがありますが、 変色したシルバーを元に戻せる温泉もあります。 高校で暗記させられる、イオン化傾向を思い出してください。 「金貸そうかな?まあ、あてにすんな。ひどすぎる借金」って覚えたやつですが 語呂のもとは、K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb H2 Cu Hg Ag Pt Auとなっていて Ag(銀)よりイオン化しやすくて、温泉によく含まれるのがFe(鉄分)です。 なので、まだ酸化していない新鮮な鉄泉につけると 硫化銀になっていた銀がもとどおり、ぴっかぴかに。 もちろん、日常的に変色した銀製品も鉄泉できれいになります。 これは便利! 今度から、鉄の含まれる温泉に行く時は、家からありとあらゆる 銀製品を持っていこう、なんて思ってしまいました。 ◆◆◆◆◆ 温泉学入門―温泉への誘い 2007年6月20日 第2刷発行 著者 日本温泉科学会 編 発行 コロナ社 定価 1200円+税 ![]() ◆過去のコラム No.1 極楽温泉とは「愛」 -極楽温泉とは何なのか? No.2 世界の温泉マーク 湯気のマークは世界共通? No.3 温泉本紹介 『温泉地再生』 No.4 スパメニューの基礎知識 マッサージ用語入門 No.5 本紹介『お風呂の歴史』 ヨーロッパのお風呂の歴史を要約 No.6 空から道から施設をのぞき見、GoogleMapで温泉巡り No.7 温泉地のゆるキャラで癒されてみる? No.8 温泉本紹介 『温泉学入門』 |
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