東海館は、材木商だった稲葉安太郎によって、河合別荘(木下杢太郎の縁者)の跡地に昭和3年に創業された歴史ある旅館を平成9年に閉館、13年にリニューアルして出来た観光用の文化施設です。 昭和初期の佇まいのまま、伊東温泉の歴史の展示や、手の込んだ旅館建築を開放しています。文人たちも多く訪れ、鉄幹夫妻、室生犀星などが伊東を詠んだ歌が残っています。 木造3階建て+望楼という増築を繰り返した施設は、浴室を日帰り客に開放しており、源泉掛け流しの湯を今でも楽しめます。 東海館の入館料は200円ですが、入浴の場合は500円で見学も含まれています。 ![]() |
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1: 伊東の海岸、なぎさ公園。湾になっているので波は穏やかです。 2: 東海館の堂々たる外観、隣の文化財に指定された旅館「いな葉」も同様な破風造の宿で、 この1画だけ時が止まっているような錯覚を覚えます。 3: 展望室から見た伊豆の町。 4階の高さにある展望室では360℃の眺めと通り抜ける風が気持ちよいです。 4: 大浴場には浴槽が1つ、洗い場にはシャワーがあり、全体的に新しくきれいでした。 |
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大小2つの浴室があり、時間によって男女を入替えています。大浴場は定員7~8人ほど、小浴場は3人ほどの大きさです。 温泉は、PH8.6のアルカリ性単純泉で無色透明、特に匂いや味もありません。湧出温度が26℃なので42℃まで加温していますが、加水や循環、消毒はない源泉掛け流しです。 大浴場は獅子、小浴場はタコから流れ出る湯は、常に浴槽の淵から流れ出ていて、人数も制限しているので常にきれいな状態です。 浴室は全面タイル張り、建物のイメージとはちょっとずれますが、非常に新しくきれいです。壁と同じタイルがそのまま天井まではってあり、お風呂の天井材がいつも気になる人としてはその清潔さに好印象が残りました。 さらっとしたほどよい温度の湯は、長湯もできるのが嬉しいかったです。 |
5: 客室「牡丹の間」、あちこちに趣向が凝らしてある素適な部屋です。他それぞれの部屋に工夫があり、 数奇屋造り風の主室の床柱は桜だったり、客室は1部屋づつ違う飾り窓と灯りの細工がしてあったり 踏み込み部分の飛石風の輪切り木の下にはコルクが敷いてあるなどなど見ていて飽きないです。 6: そんな客室からは横の松川が眺められます。 7: 展望室で一生懸命、子供の写真を撮ろうとしているお父さんが微笑ましかったです。 |
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8: 松川から見た東海館 9: きれいな喫茶室もありました。お風呂後はここで一息。あんみつなど甘い物もあってお勧めです。 10: 小浴場の湯口のタコ、なんとも微笑ましいその姿、大浴場の凛々しい獅子とは対照的です。 |
大正から昭和初期にかけての和風建築の技術が最高レベルに達した時に、腕のある棟梁たちを競わせて造ったこの施設。とにかく2つと同じ部屋がない造りは見ていて飽きないです。 町の中、川沿いに並ぶ文化財建築ですが、当時より建築基準法が厳しくなった今、木造三階建ての旅館を市街地に新しく建てることはできないので、今ある旅館をこういう形でも残していくというのは本当に重要だなと思いました。 温泉はもちろんよい湯ですが、旅館の名残か皆接客も丁寧なのも嬉しい、伊東の歴史と古き良き和風建築を一緒に楽しめる、非常に貴重な施設でした。伊東観光の中で、ふらっとひと湯浴びて、喫茶室でまったりというコースがお勧めです。 <2006.9> |